第26回 月いちフォーラム ~エコツアーの歩き方~
『あなたの知らない地球にご案内します ~深海へのバーチャルツアー~』
日時: 8月20日(水) 18:30~20:00
ゲスト: 佐藤孝子氏(独立行政法人 海洋研究開発機構)

昨年11月の「月いちフォーラム」に引き続き、2回目の登場となる佐藤さん。朗らかで親しみやすい佐藤さんの話に、参加者のみなさんも引き込まれていました。
日本エコツーリズム協会では、事前に佐藤さんと電話とメールで打合せを重ね、当日展示する標本や、最近のニュースに登場したもの、それに独立行政法人海洋研究開発機構(以下JAMSTEC)で出版した佐藤さんの絵本をどうフォーラムに絡めていくか話し合いました。前回のフォーラム後、あらたに標本をプラスティネーション技術を用いて作製することができ、展示できる標本も増えたそうです。
(プラスティネーション:身体を構成している水分と脂肪分をプラスチックなどの合成樹脂に置き換える。腐敗をおこさない) その結果、当日会場に届いたのは、海の底に沈んでいたクジラの脊椎の骨、鉄のウロコを持つスケーリーフット、シロウリガイの生サンプルなどなど。
その中でも・・・私の夢を一瞬にして砕いたクリオネの標本のことは忘れられません。(当然だけど)青くない! かわいくない!(失礼) でもこれが、実際に海に生息している生物だったと思うと、思わず(ケースを)なでずにはいられません。その後、別の方から「クリオネって、みかけによらず獰猛よ。共食いもしちゃうんだから」と聞き、しかもその食事の仕方は、「頭部から6本の触手を出してがっつり」いくそうで。それはそれで見てみたい・・・かも。

↑クリオネの標本。サイズがわかりにくくてすみません。ケースはおよそ2センチ四方でした。
当日そろった展示物: (展示にあたり、会場のモンベルクラブ渋谷店さんには大変お世話になりました)
・水深11,000m、2,000mなどの深さに持っていったカップラーメン容器。
・鉄のウロコを持つ「
ウロコフタマネガイ(スケーリーフット)学名(Crysomallon squamiferum )」の標本。硫化鉄のウロコを持つ巻貝。そっと磁石をくっつけてみると、かすかに反応するのがわかります。
・
シロウリガイの生サンプル。普段は冷凍庫に入っていて、会場でタッパーを開ける頃には程よく解凍されていました。山梨名物・あわびの煮貝に「外見は」似ています。外見だけは・・・。匂いは、生臭かったです。
・
ハダカイワシの標本。10cmくらいの魚ですが、細身の身体に似合わず、肉厚の舌べらを持つ深海魚。
・
チューブワームの外側と、中身のそれぞれの標本。チューブワームというのは、ハオリムシというものの仲間なのですが、そんなこと言われてもよくわかりません。ということで、「チューブワーム」で画像検索してみてください。食事前には検索しないほうがいいかもしれません。発見されてからも、分類学上どこに入れたらいいのかしばらく定まらなかったといいます。
⇒wikipediaから引用
チューブワーム(tubeworm)とは、深海の熱水噴出孔周辺に生息する生物で、チューブ状の棲管に入り、入り口から頭を覗かせる。
体長は数十cmほどで先端には紅色の突起が存在する。口、胃腸、肛門などの消化管等をもたず、化学合成菌と共生している。化学合成菌には突起から硫化水素等を取り込み菌に供給し、菌は有機物を供給している。
この説明でもよくわからん! という方。ぜひ画像検索を。

↑展示物の一部。
さてクジラの骨。運び込んだときに感じたのですが、意外に軽い。「クジラ」「骨」というだけで、勝手に重いものと思い込んでいたのですが、大人ひとりで充分持ち上げられる重さ。佐藤さんいわく、この骨は、クジラが死んで海の底に沈み、肉も脂もなくなり、すっかすかの状態なのだそうです。そしてその「肉も脂もなくなる」過程で、硫化水素が出てきて二枚貝がくっついたり、ホネクイハナムシという生物が取り付いたりし、
鯨骨生物群集(げいこつせいぶつぐんしゅう)が出来上がるのだそうです。いわばクジラの骨が養う生物たち。
「クジラは死んでも海の生物を支えている」(佐藤さん)。
↑海底に沈んでいた、クジラの脊椎の骨。「鯨骨生物群集」を養ったあとのものです。
フォーラムの最後のほうでは、深海調査時の映像が流されました。ときおり聞こえてくる乗組員の声、臨場感あふれ、まるで実際に潜水艦に乗っているようです。映像には深海生物がいくつか出てきましたが、なかでも深海魚が迫ってくる(実際にはカメラが近付いていっている)ところがありました。
よくテレビ番組で海中の魚を撮影したものを目にすることがありますが、その映像だと魚は逃げて遠ざかっています。けれどこの映像では、魚が近付いてくるようにみえ、そしてその目の大きさに驚かされました。
ちなみに、チムニーという熱水が出てくるところに近付いたとき、潜水艦がこげたり、カメラレンズが溶けてしまったこともあるそうです。何があるかわからない深海。
そして「しんかい6500」にはトイレがないので、佐藤さんは乗船する前日から水分をとるのを控えるそうです。乗船時間はトータルで8時間。ただ、往復に時間がかかるので、海底にいるのは3時間くらいだそうです。
フォーラムには、子供から大人まで多くの方に参加していただきました。みなさま、ありがとうございました。
※会場では、佐藤さんが執筆した深海についての絵本の販売も行ないました。この本は通常本屋さんで扱っていないものなので、直接JAMSTECにお問合せください。
『くじら号のちきゅう大ぼうけん 深い海のいきものたち』
文: 佐藤孝子 絵: 阿部伸二
JAMSTECサイトは⇒
こちら【今回のフォーラムのキーワード】・「自分達の足元である、この地球をよく知る、ということが大事。」(佐藤さん)
【参加者の方のアンケートから】・楽しかったです。これからもがんばってください。
・内容に大変満足しました。極限の環境に魅せられ、そこに挑む研究者の自然体なお話を、映像と共に伺えたため。今日のフォーラムそのものが「旅」でした。
次回の月いちフォーラムは、9月10日(水)に開催します。
9月10日(水)18:30~20:00(18:00開場)
『なぜヨーロッパではフットツーリングが盛んなのか ~イギリス湖水地方の歩きに学ぶ』
ゲスト: 山浦正昭氏(カントリーウォーカー、オンフットワーク代表)
申込は、モンベルクラブ渋谷店まで(tel: 03-5784-4005)
くわしくは⇒こちら

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ジャンル : 旅行